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教師から見た公立中高一貫校とは? 『都立中高一貫校10校の真実』の感想

公立中高一貫校に関する本は、かなり出版されています。

 

ですが、大半は「合格体験記」といったようなものばかりです。

 

そんな中で、教師の視点から公立中高一貫校について書かれた本がこちら。

 

感想をまじえながら、公立中高一貫校の実態に迫っていきたいと思います。

著者は白鴎高校の元教員

著者の河合敦氏は、2004年〜2013年まで白鴎高校で日本史教鞭を執っていました(担当は日本史)。

 

白鴎高校は2005年に東京都初の公立中高一貫校として新生され、著者はその変化を目の当たりにしたのです。

 

そういった点で、公立中高一貫校の黎明期を知る資料とも言えます。

白鴎について知りたければ必読

「10校の真実」と題されていますが、大半は白鴎についてです。

 

東京初の公立中高一貫校、白鴎高校は伝統ゆえ特色ある学校です。

 

例えば、授業のカリキュラムに日本の伝統文化芸能を知るというのがあり、立地を活かして実際に現場に行くなどの課外授業があります。

 

 

そういった事が適性検査にも反映されており、俳句や短歌に関する問題も出題されます。

 

 

また中高一貫校化した最初の年の状況が興味深いです。

 

 

それまで白鴎高校は有名校であったものの、進学率もパッとせず低倍率。

 

それが、附属中学校が出来てそのあまりの募集人数の多さに教師陣はとても動揺したそうです。

 

当時は面接もあったため、事前に書類審査を行っては足切りをした後、適性検査を行ったといいます。

 

 

そういった内部事情などが書かれているので、白鴎を志望している方は特に必読といえます。

10校の真実と題しているが…

これについては、やや看板に偽りありです。

 

第3章で九段中等教育学校を含めた東京都にある公立中高一貫校についての私感や学校情報が載っています。

 

が、残念ながらそれほど参考になる所はありませんでした。

 

ただ、各学校について簡略にまとめられているので、ざっと全体を掴みたいならば使えると思います。

適性検査という矛盾

公立中高一貫校は、表向き「学力試験」を行ってはいけないことになっています。

 

なぜなら、エリート校化し受験競争の低年齢化に拍車をかけるから。

 

しかし「適性検査」という事実上の入学者選抜試験が行われています。

 

それに対して著者は、我々と同じ疑問を抱いているようです。

 

 

現場に居たからこそ言える、曝露に近いことまで書いています。

 

では、適性検査に登場するような設問は、学習塾に通うことによって果たして解けるようになるのであろうか?
「なる」というのが正解である。
「適正検査と学力試験は違う」と各自治体の教育委員会は主張するが、反復や訓練しだいで高得点がマークできるようになるわけだから、その性格は、私立中学の入試となんら変わるところはないのである。P.161〜162

 

同時に「現実的な事をいえば、公立中高一貫校は受験競争に拍車をかけ、エリート校化している」とも明言しています。

 

このブログでも何度か書きましたが、適性検査の問題を目にすると、年々私立校寄りな作り。

 

また「有名大学に進学させる事が目的ではない」と言いつつも、それは建前に過ぎません。

 

東京の公立中高一貫校の場合、全て歴史ある学校を母体とし、小石川や両国など東大に何十名も合格させていた学校まであります。

本当に公立中高一貫校はお買い得なのか?

公立中高一貫校へ行くメリットとしてまずあがるのが「高校受験もなく、学費もタダで私立校並の授業を行ってくれる」というものでしょう。

 

それは「半分本当で、半分理想的すぎる」というのが本書を読んでいて感じました。

 

これは有名私立校などでもよく聞かれる話ですが、高倍率の中をくぐり抜けてきたのに授業が早すぎて、ついて行けない生徒が例年一定数いるようです。

 

著者はこの要因を、適性検査にあると見ています。

この検査は思考力・判断力を見るということで、自動が頭をひねって長い時間をかけて答えを導き出していくものだといえる。良問ではあるが、そんな思考力は、今の大学入試制度ではそれほど必要とされる力では無いのだ。P.186

 

つまり、「本来進学校向きのタイプじゃない児童が入ってしまい、気の毒なことに落ちこぼれてしまう」。

 

そういった生徒のケアが今後、公立中高一貫校だけではなく全ての学校に必要なわけですが、もちろん簡単ではありません。

 

やはり、より抜本的な教育改革が必要なのでしょうか。

有能な教員から敬遠される中高一貫校

学校の教員というのは、どこも激務です。

 

著者いわく、中高一貫校化してからさらに勤労時間が激増したと言います。

 

また以外なことに、公立中高一貫校は力量ある高校の教員から敬遠されがちだということです。

 

というのも、「忙しくなる上に、中学生にも教えないといけないから」。

 

なので指導力のある高校教員は、日比谷や西といった進学重点校を希望する傾向が強いそうです。

 

もちろんこれは著者の一見解であり、公立中高一貫校にも優秀な先生方は沢山居るという但し書きがされています。

あとがきだけでも読む価値あり

本書は、「公立中高一貫校を理想化するでなく裏側や現実をもっと知りたい」と思っていた私にとっては良書でした。

 

先に白鴎高校附属中学校の志望者は必読と書きましたが、公立中高一貫校の志望者も大いに参考になるので、一読されるのをオススメします。

 

私が特に印象的だったのは、本書のあとがきです。

 

著者はドラマの『金八先生』に憧れて、教職の世界に入ったようです。

 

その金八先生が敬愛する坂本龍馬に興味を抱き、大学で史学科を専攻し、そのまま東京都の教員となります。

 

これで高校で日本史を教えられるのだ、と思い込んでいたら、採用先はなんと養護学校(特別支援学校)。

 

著者はその現実に愕然としますが、渋々その養護学校に着任することになります。

 

日本史を教えるどころか、文字を書くことさえ出来ない生徒を前に、著者は疲労困憊します。

 

ですが1年も経つと、学校生活も慣れ、やりがいを感じるようになったそうです。

 

そして、遠足時に起こったある感動的なエピソード。

 

そこを読んでいて、私は不覚にも涙腺が緩んでしまいました。

 

養護学校の後、著者は定時制の高校に着任します。

 

片道2時間かかるその学校生活もまた色々あったようです。

 

 

3校目にしてようやく全日制の学校で日本史を教える事が出来たわけですが、先の経験があったからこそ今までやってこれたと明言しています。

 

このあとがきを読んで、公立中高一貫校についてだけではなく、学校と教育という答えの出ない問いについても考えさせられます。

 

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